1 七日と道徳-維新編-
2020年のコロナによる外出制限が行われた際に、きつね氏(現Studio OZON)が企画した店舗向けの支援のために行われたプロジェクト。実際には公演しない架空の公演「七日と道徳」のチケットを購入するという形で作られた収益を店舗に寄付することで、公演ができない店舗をバックアップした。
各店舗はSNSを中心に「七日と道徳」を盛り上げるために◯◯編などの表現で各店舗ごとの特色を見せるような形で様々な支援用プロモーションを展開した。駒込ガレージでは「七日と道徳」エンディングムービーや、駒込ガレージでは「維新編」を行うという設定でキービジュアルを作成した。
実際のイベント時に制作した大まかな流れに関しては、現在もNOTEに文章が残されている。「七日と道徳 -維新編-」千穐楽
キービジュアルを見ても、現在のキービジュアルと比べると
・鳥が1羽しかいない
・兎が1羽いる
などの違いが見られることができる。
2 七刻動乱(2020年発表時)
チャリティーイベント終了後に本作は架空ではあるがリメイクし「七刻動乱」として再発表する旨を2030年時点で発表しているが、この時点では現在の「七刻動乱」の設定は作られていない。当初のプロットでは「二二六事件」のような設定を考えており、「七日と道徳」との関連性から「七」の文字をタイトルに使用していることから「五六事件」という5月6日に起きた倒幕を計画した7名のなかで計画を揺るがす事件が起きるという設定だった。
メインタイトル下には「El amanecer Ilegara」と入っているのは現在のキービジュアルにも入っているが、このサブタイトルは「夜明け前」という意味のスペイン語であり、2020年当時のプロットアイデアとしてスペインと日本の設定が少しずつ入れ替わっていくようなストーリーを考えていたことの名残である。
3 正義はまた蘇る
2020年に「ドクター・テラスの秘密の実験」の作者、前原白夜氏がコロナ禍での店舗向けチャリティーイベントとして、新作「正義はまた蘇る」のオンライン公演を各店舗で無償公演(店舗は公演費を徴収することで店舗への売上貢献を行う)という企画の際に、協力する形で制作したキービジュアル。
本作品の公演は現在、クイーンズワルツで行われているが、このキービジュアルは特別公演用にデザインされたもので、使用されていない。
前原白夜氏の名前はSWANDIVE作品「回想」の中で登場するが、これは回想を執筆中のpsykaが前原氏に作品の相談をした際に、ネタバレをすることになるが良いかを尋ねた際に「私一人の体験が無くなることでpsykaさんの完成度が上がり、それが結果としてプレイヤー全員の利益になるのだから、むしろとても光栄なことです」と協力してくれたというエピソードがある。
4 三年目の告白
20年前に発生した信用金庫での強盗事件の覆面をかぶった実行犯6人が、アシがつかないように20年間隠しておいた場所に集まり、改めて山分けをするという時、6人しか知らない集合場所に集まった6人は眼の前に1人の死体を発見する。事件当時、6人は互いの顔を認識しておらず、6人は本物の実行犯なのか、それとも眼の前の死体が実行犯なのか。
2020年にプロットを書いた作品。シチュエーションは気に入っており、6人と1人の死体の関係性からドラマを生み出す状態は良いのだが、当時はマーダーミステリーに仕上げようとする結果、体験感がイメージ通りに仕上がらなかったため「製作フォルダ」は存在しているが完成には至っていない。
5 女王蜂と紐
昭和6年、札幌・薄野(すすきの)。その日はいつにもまして雪の降る夜だった。薄野遊郭にある遊女屋で人気の花魁「針菖蒲(はりあやめ)」が絞殺された状態で発見される。おりしもの雪が積もった中に足跡はなく、建物の中にいる面々の中に彼女を殺した犯人がいる。
「Call of Diamond」をリリースした頃に考えたオンライン用作品。昭和6年の薄野は電話などの連絡手段の整備が終わっていないことや、雪による状況制限などがシチュエーションとして使いやすかったので考えたもの。オンライン5人用ではあるが、コロナの落ち着きと共に優先順位が下がったのでリリースされなかった。キービジュアル的には色の鮮やかさやフリー素材と思えない構図のバランスの秀逸な作品のひとつ。
6 嘘と友情
2020年に発表されたSWANDIVEの2作品目となる「と」シリーズ3部作のひとつ。コロナ禍でのリリースであったことや、SWANDIVEのコンセプトに基づいてオープン公演はほとんどなく貸切公演のみの依頼でしか公演が行われない関係上、5年経った今も公演数はかなり少ない作品の一つ。
制作当時、キービジュアルとして女性同士の嘘と友情を描く作品であること、物語がクリスマス当日であるということから2つのキービジュアル案を制作した。この際にどちらを採用するかに関しては、本作品のベースとなるアイデア「女子会をマダミスにする」というアイデアを出したRAYが現在採用されているクリスマスリースを選択した経緯がある。
このクリスマスリースのキービジュアルは当時Twitterにアップした際に高インプレッションを記録した。当時のPSYKA_MMGで投稿したものでは驚異的な数値を叩き出している。
7 セカイハオワリデデキテイル
2020年12月26日に最初の公演(先行体験会)が行われた現在もSWANDIVEのいくつかあるコンセプトのひとう「オレンジレーベル」の代表作。このキービジュアルは2019年12月に製作されており、後に様々な理由を経て現在のデザインに変更してリリースされている。先行体験会の時点ではすでに現在のデザインになっているため、このデザインは2020年夏頃までに駒込ガレージに訪れたことがある人でなければ見ていないものになる。
キービジュアルに入っているあらすじは現在のビジュアルにも書かれており、プロット自体は大きく変わっていなことが伺えるが、2019年時点ではセカイハオワリデデキテイルは一般的な情報カードを調べるフォーマットに限りなく近く、ゲームとしてはまったく異なるものだった。
8 5三歩成殺人事件
2020年当時はコロナの影響による営業時間に関する制限も多く、店舗としての稼働が少なかったため、時間があり、プロモーションの一環としてTwicasで生配信「SWANDIVE式生配信」を行っていた。その中で「視聴者から出されたタイトルをその場でキービジュアルにする」という企画があり、そこで10分ほどで作られたのが本作品である。
5三歩成殺人事件はタイトルだけしか存在しておらずプロットは存在しないが、PSYKAはアマチュア将棋初段であり、将棋好きもあるので制作は可能ではないかと考えていると思われる。
9 讐炎
「復讐」はミステリーに限らず物語において便利で優秀なファクターと言えます。特にマーダーミステリーにおいては殺意を示すわかりやすい項目であり、同時に復讐を果たすことは正しいことなのかという行動に対する葛藤を生む方法としても使いやすいと言えます。
このキービジュアルは空想プランニングという写真をベースに架空のマーダーミステリーを想定してキービジュアルやアイデアをまとめておくX上のハッシュタグ#空想プランニングに掲載されたものです。黒い塊からにじみ出るように溢れる炎が情念に近い感情を表しているようにも見え、復讐の炎から名付けられています。また、「しゅうえん」は「終焉」や「終演」などの書き方をすることも出来るのでダブルミーニングによるタイトル回収のアイデアも考えられるようになっています。
10 占星術師の憂鬱
「讐炎」と同時期に制作された空想プランニングのキービジュアルですが、こちらはネットにはアップされていません。かなり制作に近い段階まで進めていたため掲載のタイミングを逃した作品になります。
パーティの招待状を受け取って会場となる洋館に集められた12人の招待客。そしてその会場では次々と人が死んでいきます。それらの事件はすべて、その中にいる占星術師が犯人であることを指し示しているなか、残された人たちは本当にその占星術師が犯人なのかを突き止めていくというストーリーです。本作品は作品中に新たな殺人事件が起きるため、プレイヤーごとのプレイ時間に大きな影響を与えることがあり、当時は製作を断念しました。一方で本作で考えたアイデアのいくつかは「輪転の劇場2」や「鵺が啼く頃に」などに活かされています。
11 失恋-SHITUKOI-
「復讐」と同様に「恋愛感情」もまたマーダーミステリーにおいては取り扱いやすく、物語に彩りを与えるのに有効な手段と言えます。本作「失恋」は「しつこい」と読み、この作品は何人もの「執着」が登場するお話です。キービジュアルに入っているキャッチコピー「私は していない」には様々な漢字が入り、それが登場する多くのストーリーを表しています。それが物語の展開によって現れては消える、まるで雪のような存在であるというお話です。
12 容疑者γ
2021年にプロットを作成し、フォーマットも完成しているので内容を詰める段階で止まっている本作は「体験するのに1週間かかるマダミス」として制作される予定だった作品であり、価格面においても一定の評価を超えなければセールスが期待できないためペンディングになっている企画のひとつ。
都内でおきた連続殺人事件を追う5人の刑事の物語として1週間前に最初のハンドアウトを提供し、以降1日ごとに各プレイヤーには行動に関するハンドアウトや捜査資料が配られる。また3日目には容疑者が出頭してくることになる。容疑者の要求は「4日後に操作感の中から1名の取り調べを受ける。」という指定だった。
6日間で渡される資料を元に捜査員同士は直接会う以外の方法であれば自由に連絡を取り合って操作を進めることが出来る。そして7日目に全体捜査鍵を行い、容疑者の取り調べを行う。「5DIVE」に通じるものがあるフォーマットであり、価格面では間違いなく1万円を超えるであろう本作は4年前のプロットではあるが、おそらく現在も刺激的な体験を提供できる可能性を秘めている。
13 ケーキはどこへ消えた?
SWANDIVEの作者、psyka(1973-)は、2019年に「輪転の劇場」を書いている際にいくつかのプロットを設計している。「セカイハオワリデデキテイル」や「回想」などは2019年時点ですでにキービジュアルが存在しており後に作品化されることになるが、2019年のアイデアで唯一製品化されていないのが本作である。
4人家族とペットというほのぼのした家庭で起きる「ケーキ消失事件」を追う物語。当時はマーダーのないマダミスをコージーミステリーと呼ぼうなどの動きもあったが、本作はそういう意味では「コージーミステリー」のジャンルに属する。
特筆すべきは「犬」と「猫」はプレイアブルキャラクターであること、ペットは飼い主たちとの全体議論では「ワン」と「にゃ−」しか言うことができず、ペットだけの密談の場合は会話が可能というルールがある。
14 記憶の詩篇
架空のマーダーミステリーブランド「空想プランニング」の作品。本作ではプレイヤーに7冊の日記帳が渡され、それらを全員で読み解いていきながら、自分たちは一体何者なのかを紐解いていく現在で言う「協力型マーダーミステリー」をとっている。しかし日記帳を読み進める中で様々の事実にたどり着き、後半はマーダーミステリーのフォーマットになる。
本作は先日までフジテレビで放映されていた「全領域異常解決室」と構造が似ており、他作品の内容に抵触するため詳細は控えることにする。
15 Fragile
このキービジュアルは、プロットメモにある「あなたを殺すのに90分もいらない」の公演用にリデザインしたものである。Fragileは「取り扱い注意」という意味で、花火を持っている女性が印象的な写真を採用した。制作に進めることがなかったので本タイトルである「Fragile」はFLIGHT64のサブタイトルに移動することになる。
ここでのFragileは彼女自身を指しており、1人の女性の行動に様々な人が巻き込まれていく。雪に閉ざされてしまった山小屋。元々の宿泊客や山道が通行できず、やむなくビバークしにきた登山客。様々な人物がいる小屋のダイニングテーブル中央で見つかる1つうの予告状「90分後、アナタを殺害します」
16 マデラ・エンセラーの「証明」
このビジュアルを作った頃は、日本でも少しづつではあるが協力型マーダーミステリーといわれる作品が出始めた頃で「囁く妖精事件」んどの時期になる。
SWANDIVEはコミュニケーションゲームを主とするため、一般的な推理ゲームを作る場合、探偵/犯人の体験を推理軸でバランスをとるのは難しいと考えている。そこで、全員を探偵にすることで敵対する犯人を進行役が待ち受ける構図にする協力型はセカオワなどとは異なるコミュニケーションが成立すると考えて作ったプロット。
マデラエンセラーという犯罪研究家であり、殺人を行って自首をしてきた彼は「私が被害者を殺しました。しかし、私がどのように彼を殺したのかを証明していただかなければ、私は罪を認めません」と警察に告げるのであった。
マデラエンセラーという名前には回収用のネタが仕込まれているだがメモにその記載はなく、なぜこのような名前になったのかは現在は分からない。また本作は「」部分を変える形で連作にする構想があることがメモに残っている。
17 放蕩娘のたとえ話
本作は新約聖書に登場する「放蕩息子のたとえ話」が現代になっている。このたとえ話は福音書に登場するたとえ話の中でも有名なものである。キービジュアルに使われているのはレンブラント・ファン・レインの「放蕩息子の帰還」
本作は着想時は8人オンラインシナリオだった。特殊な議論方法を使用して多人数オンラインを成立させる予定だったが、SWANDIVEのオフライン需要を考慮してペンディングしている。現在はオフライン公演用のプロットになっている。お気づきの方もいるかと思うが本作は「回想」シリーズの作品である。夜警の作者であり、障害で70枚の自画像を遺したレンブラントにまつわる物語。いづれ世に出せる日が来るのを心待ちにしている。
18 騒音都市
声が大きなプレイヤーをTwitterでいじっている際に冗談で作ったキービジュアル。当然のことだがプロットはなかった。しかし、大きな声を持つプレイヤーが集まることで何かバトル要素のある作品に転化できないかと思考していくことになり、それにより生まれた作品が「覚醒の舞踏曲(タンゴ)」である。
19 狂気山脈 陰謀の分水嶺
2020年に発表されオンラインマーダーミステリープレイヤーの拡大に大きな貢献をした狂気山脈。コロナ渦で営業制限を受けていた駒込ガレージの店舗を維持するためのオンライン公演において「首刈り村殺人事件」と共に重要な役割を果たした作品。
SWANDIVE版ではオープニングムービーを作成したり、マスタリングで1秒単位でゲームマスターの作業を短縮する様々な処理を行うことで、通常は4時間ほどかかる公演を3時間まで短縮している。
本作と星降る天辺はオフラインでもプレイ可能だが、この作品はオンラインで行うほうが演出面やゲームルールによる体験の構築においてオフラインより勝っている。この作品をベースアイデアに作成されたのが「Call of Diamond」であり、SWANDIVEの力士において外すことが出来ない重要な作品のひとつ。
20 狂気山脈 星降る天辺
陰謀の分水嶺登場後に制作された狂気山脈の第2弾。陰謀の分水嶺と同様に公演を行っていたのでオリジナルキービジュアルが存在している。駒込ガレージではオリジナル演出などを加えている場合など、様々な作品のオリジナルキービジュアルを作成している。office KUMOKANA「一条家の人々」「裁判員の仮面」やSaga Sphere「カタロニア号の殺人」などは駒込ガレージでしかキービジュアルを見ることは出来ない。
21 南極地点X
「南極地点X」はオンラインで盤面を制作するウェブツール「ココフォリア」が制作したマーダーミステリー。ココフォリアでの運用を前提に設計されているが、当時はTRPG用ツールだったユドナリウムが先行してオンラインマダミスで採用されていたが2Dで展開するココフォリアのほうがマダミスには親和性が高く徐々に拡大していくことになる。
SWANDIVEでは販売しているハンドアウトなど細かい部分でみづらいフォーマットだったのでハンドアウトを内容を変えずに刷新し、演出面でも細かい変更を入れることでSWANDIVE演出版を提供することになる。
22 Flight64
今やSWANDIVEの誇る人気作のひとつ「Flight64」も元々は空想プランニングの作品です。構図やタイトルはそのままで現在のキービジュアルと比較してもあまり違いがないように見えます。
違いは1)サブタイトルが異なる 2)航空便の名称とコースが書かれている 3)プレイ時間や人数が適当 などがあります。もともと考えていたプロットは飛行機に乗った中で1人の女性が消えてしまうという物語でした。ユナイテッド空港824便ボートランド発サンフランシスコ経由ニューヨーク・リバティ行きという設定です。実はタイトルの「FLIGHT64」はポートランドにあるアートセンターの名前です。親に縛られている一人の女性がアーティストになるために家族の前から消えるというお話でした。
23 Follow Me
「密談」のリアルじゃない感をリアルにするために、空間に大音量の音楽が流れていたら自然と近づいて話すことになるなと思って作ったキービジュアルがこのFollow meです。イベントに日程などは制作よりも前の日時であり、1DAYイベントのように見えますが通常の公演型で設計しています。
実際には「設定が面白いだけで体験の面白さに直結しない」という理由でお蔵入りになっています。
24 輪転の劇場2
今や連続公演でも人気を博している「輪転の劇場2」は、もともとは空想プランニングのエイプリルフール企画で作成したキービジュアルでした。フリー素材の写真を見ている時に、タロットカードのマジシャンが隣のカードを盗み見るような構図の写真を見つけて「魔法使いの目撃者」というサブタイトルが思いつき、ちょうど3月末ということもありアップしたという経緯があります。